じっくり時間をかけておいしいちゃんこを作ります木瀬部屋流ちゃんこのこだわりは稽古を終えて関取から食事がスタートちゃんこのことはお相撲さんに聞こう!「ちゃんこ」といってまず思い浮かべるのはお相撲さん。ちゃんこのことを聞きに、力士37人の食を支える木瀬部屋さんの台所にお邪魔しました。 朝7時過ぎの木瀬部屋は、すでに稽古が始まり、独特の緊張感が漂っていました。ぶつかり稽古の激しい音が響きます。そんな稽古場の脇を通り抜け、2階へ上がったところに、力士たちの食を支える台所があります。広い台所では、ちゃんこ当番たちが忙しそうにちゃんこの支度をしているところでした。「“ちゃんこ”は本来鍋だけを指す言葉ではなく、相撲取りが作る料理をすべて“ちゃんこ”と呼ぶんです」そう教えてくれたのは、ちゃんこ番のリーダー、肥後ノ龍さん。若いちゃんこ番たちにテキパキと指示を出しながら、自らも大きな手で器用に肉や野菜を切っていきます。大鍋からはグツグツと湯気が立ち、台所はかなりの暑さです。入門したての頃は、一度に作る量の多さに圧倒されたそうですが、今では食材を見ながら、時には若い衆のリクエストにも応じながら、その日のメニューを決めていくそう。日替わりで、また昼と夜で、醤油、味噌、キムチ、トマト、カレーと、味に変化を持たせています。相撲部屋の食事は、稽古のあとの昼と夜の1日2食が基本。肉や魚、たっぷりの野菜などをバランスよく入れ、じっくりていねいに煮込んだちゃんこ鍋は、消化がよく、激しい稽古のあとでも食が進み、たくさん食べて体を大きくするには、ぴったりの料理なのです。 「はじめに根菜類を入れ、しばらく煮たあとに味をつけてから肉を入れるのが部屋の伝統。自慢の味は味噌ちゃんこです」料理の工程を見ていると、食材を入れるタイミングにとても気を使っているのがわかります。「肉は毎回必ず入れますが、場所中は鶏肉だけを使います。鶏は手をつかないので縁起がいいとされているので」勝負の世界では、こんなところにもゲン担ぎがあるのです。ちが上がってきて師匠とともに席に着きます。それに合わせて台所では鍋のほかにも2品ほどの料理を作り、あっという間にテーブルに料理が並びました。ひと心地ついたところで、幕下以下の力士たちの食事が続きます。おいしそうにちゃんこを頬張る力士たちの様子に、ちゃんこ番たちのていねいな仕事が、相撲部屋を縁の下で支えているのだと実感しました。 10時を回った頃、稽古を終えた関取た今日のちゃんこ鍋はトマト味ちゃんこ鍋ってどんなもの? 4丼の大きさもいろいろ。やせ型の力士には右のラーメン丼で3杯は食べさせる木瀬部屋は力士数37人と、相撲部屋では第二の大所帯。食材は毎日大量に配達してもらうそう木瀬部屋のちゃんこ番肥後ノ龍さんこの力士に聞きましたちゃんこの歴史相撲部屋で鍋を食べるようになったのは、明治時代。出羽海部屋が始まりといわれています。「ちゃんこ」の語源には諸説ありますが、親方を「親=ちゃん」、弟子を「子=こ」と呼び、親方と弟子が一緒に食べるので「ちゃんこ」となったそうです。
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